自営業でも住宅ローンは組める?審査の実態

自営業だけど住宅ローンで家を買いたい

 

「自営業は住宅ローンに通りにくい」――よく聞く話ですが、正確ではありません。会社員と評価軸が違うだけで、押さえるべき要点を準備すれば十分に通過は狙えます。本記事では、審査の見られ方、必要書類、年収の評価方法(黒字・所得控除の扱い)、通過率を上げる実践ノウハウまで、プロ目線で具体的に解説します。後半では“落ちやすい理由”と回避策、スケジュールモデル、よくあるQ&Aも収録。この記事を下敷きにチェックリスト化すれば、「通る申込み」へ着実に近づけます。

 

自営業の審査が会社員と違うポイント

銀行は「返済原資の安定性」を最重視します。会社員は給与明細で安定性を確認しやすい一方、自営業は事業の継続性・利益の再現性も合わせてチェックされます。特に以下の項目が注目されます。

 

主な評価軸(自営業)

  • 所得の水準と推移:直近3期の申告所得(課税所得)を中心に安定推移か
  • 売上と粗利の安定:季節要因や取引先の集中度、粗利率のブレ
  • 資金繰りの余力:現預金残高、借入状況、返済原資の確実性
  • 信用情報:延滞の有無、クレカ・リボ・他ローンの状況
  • 確定申告の整合性:申告内容と通帳入出金、請求書・帳簿の整合

 

「所得の見られ方」──売上ではなく“課税所得”が基準

審査で重視されるのは売上額ではなく課税所得(事業所得)です。節税で利益を圧縮しすぎると、ローンの借入可能額が小さくなる落とし穴に。一般的には直近3期の平均所得(or直近期重視)が基準になりやすいです。

借入可能額の考え方(シンプルモデル)

  • 年間返済可能額 ≒ 課税所得 × 許容返済負担率(25〜35%目安)
  • 借入可能額は「金利・期間・返済方法(元利均等/元金均等)」で変動

 

目安早見表(課税所得ベース・概算)
課税所得 許容返済負担率30%の場合の年間返済上限 35年・金利1.0%想定の借入目安
350万円 約105万円/年 約3,300〜3,600万円
500万円 約150万円/年 約4,700〜5,100万円
700万円 約210万円/年 約6,500〜7,100万円

※概算。保証料・団信・手数料・固定/変動タイプ差は未反映。正確な試算は各社シミュレーターで。

 

必要書類と「通る書き方」実例

自営業は会社員よりも提出書類が多く、資料の整合性と読みやすさで評価が上がります。

 

基本書類

  • 確定申告書(第一表・第二表)3期分
  • 青色申告決算書(損益計算書・貸借対照表)3期分
  • 事業の通帳(入出金履歴)6〜12か月分
  • 納税証明書(その1・その2)や納税領収
  • 見積・請求書・主要取引先一覧(任意・信頼性UP)

書き方・添付のコツ

  • 数字の橋渡し:申告の「売上」と通帳入金の対応表を自作(任意)
  • 単発大型案件の説明:一回性か継続性かを1枚メモで注記
  • 費用計上の妥当性:事業と私費を明確に分離(プライベート流用はNG)

 

審査でチェックされる“安定性シグナル”

以下の信号はプラス評価になりやすい要素です。

プラス評価の例

  • 3期連続の黒字、または直近期で黒字転換し改善傾向が明確
  • 売上の取引先が過度に集中していない(依存先が1社に偏らない
  • 6か月以上の生活費+3か月分返済額の現預金を確保
  • 既存借入が少ない、リボ・キャッシング残高がない

マイナス評価の例

  • 連続赤字、または大幅な所得急減(理由説明なく)
  • 入出金が不規則で、帳簿と通帳の整合が取れていない
  • 税金・社会保険料の滞納履歴がある
  • 直前に作ったクレカ・消費性ローンの申込が多い

 

よくある誤解:節税と借入可能額のトレードオフ

経費計上で課税所得を小さくしすぎる=返済原資が小さいと評価され、借入可能額は縮みます。住宅購入予定の2〜3年前からは、必要以上の節税に偏らない“見せ方”へ軌道修正を。

 

チェック式ミニシミュレーション
  • 現状の課税所得:□万円 → 借入目安(35年/金利1%)は表で確認
  • 「今年は控除を抑える」場合:課税所得+□万円 → 借入余力アップ見込み
  • ただし、税負担増と実質キャッシュのバランスを要検討

 

審査を有利にする5つの実践テク

1. 事前の“信用情報ダイエット”

リボ・キャッシングは完済or圧縮。クレカは利用枚数と枠をスリム化。直前の新規作成・増枠は避け、延滞ゼロの状態で挑む。

2. 入出金の透明化

事業通帳と家計口座を完全分離。入金元・出金先が明確になるようメモ欄や対照表で補足。

3. 余剰資金のクッション

申込時点で生活費6か月+返済3か月分の現預金を目安に。突発的な売上減に対する耐性を示せます。

4. 取引先集中の緩和

売上の上位2社で80%超などはリスクと見られます。新規取引の開拓計画、長期取引の契約書写し等で継続性をアピール。

5. ローン商品選びの“戦略”

変動は返済額が軽く見えますが、審査では将来金利上昇も勘案。固定(全期間 or 固定期間選択)で返済計画の安定性を優先すると通りやすいことも。

 

ケース別:こう整えると強い(ミニ事例)

ケースA:年商は成長、利益が薄い個人事業主

粗利率が上がる見込みの根拠資料(仕入交渉の改善、固定費圧縮の計画)と、直近四半期の月次PLを添付。利益率改善のトレンドを示せれば、直近期重視の金融機関で評価が上がります。

ケースB:所得の年ブレが大きいフリーランス

3期平均の所得でカバー。単発大型案件の説明メモ、翌期の受注見込み一覧(確度S/A/B)を1枚で提示し、再現性を強調。

ケースC:法人オーナー(役員報酬)

役員報酬の安定支給を重視。会社決算の健全性(自己資本比率・借入依存度)と、会社資金と個人資金の分離を明確に。

 

よくある否決理由と回避策

否決理由の典型 回避策
直近期が赤字 四半期ベースで黒字転換を示す、固定費削減計画を提出、申込タイミングを改善後に
税・社保の滞納履歴 完納後に証憑を添付、再発防止の体制(納付スケジュール表)を提出
通帳と申告の整合不良 入出金の対照表を作成、私費混在口座を解消してから申込
申込乱発・延滞履歴 6か月はクリーン期間を作る、審査は2〜3本に絞る

 

審査スケジュールのモデル(自営業向け)

準備〜本審査の流れ(目安)

  1. −3〜−6か月:信用情報の整備、リボ圧縮、通帳分離
  2. −2〜−3か月:必要書類の収集、月次試算表・対照表を整備
  3. −1か月:仮審査(2〜3社)、商品性・金利タイプを比較
  4. 0か月:本審査申込、追加資料提出、金銭消費貸借契約へ

※物件スケジュール(売買契約・決済)と並走するため、準備は前倒しが安全です。

 

チェックリスト(コピペ活用OK)

申込前チェック

  • 確定申告書・青色申告決算書3期分のコピーを用意した
  • 事業通帳と家計口座は分離、入出金の対照表を作った
  • リボ・キャッシングなし、延滞ゼロを6か月以上継続
  • 生活費6か月+返済3か月分の現預金を確保
  • 単発売上の説明メモ、来期受注見込みリストを用意

書類の“読みやすさ”チェック

  • 売上推移グラフ(簡易表でもOK)を1枚添付
  • 申告数字⇔通帳入金の対応が一見して分かる
  • 住所・氏名・屋号・電話番号の表記が書類間で一致

 

Q&A:現場で多い質問

 

Q. 直近で法人化したばかり。個人時代の実績は評価される?

A. 銀行次第ですが、事業の連続性が説明できれば個人時代の実績を加味するケースも。個人3期+法人期の決算資料、同一事業・同一取引先の継続を示しましょう。

Q. 赤字でも通るケースは?

A. 税務上の減価償却で赤字だが営業キャッシュフローはプラスなど、実質的な返済原資がある場合は検討余地あり。月次で黒字回復を示すと前進します。

Q. 変動と固定、どちらが通りやすい?

A. 商品や行内方針によりますが、返済額の読みやすさという観点では固定(全期間/固定期間選択)がプラス評価になることも。家計との整合を最優先で。

 

自営業ローンは「準備」と「整合性」で勝つ

自営業でも住宅ローンは十分に組めます。鍵は、課税所得の見せ方書類の整合性、そして安定性のシグナルを積み上げること。節税一辺倒から借入を意識した決算へ舵を切り、入出金の透明性を高めれば、審査は確実に前へ進みます。今日から、通帳の分離・対照表の作成・リボゼロ化・現預金のクッションづくりを始めましょう。

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